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 異郷の花菖蒲

   広島県  三輪 昇


 この写真は、まぎれもなく日本の花菖蒲群ですが、周囲の様子がいわゆる花菖蒲園とは異なっています。実は、これはロンドン郊外にあるRHSウィズリー植物園で栽培されている花菖蒲達なのです。各株には英文で、"CHIGO-GESHO"などと、それぞれの品種に名札が付けられています。私が英国で見つけた唯一1ヶ所の栽培地でした。

 仕事の関係で、昭和63年5月より、平成9年7月までの9年2ヶ月間、家族と共にロンドンに住み、RHS(王立園芸家協会)の会員にもなり、近郊各地の庭園、公園、お城など随分見て廻り、チェルシーフラワーショーも欠かさず参観し、自分の庭(借家)にも精出してきましたが、日本で私が惹かれ、狭いながらも横浜の自宅の庭で育てていた花菖蒲を、園芸の本場である英国では見かける機会はなく、やっとウィズリー植物園で再開したときは、心から懐かしく、しばらく見とれたものでした。

 日本から訪れてきた花好きの友人達を必ずウィズリーに案内し、「この異郷に日本の花が生きているのだよと自慢したものです。」

 古くなりますが、昭和57年当時の英国の花菖蒲事情について、協会50周年記念特別号(1983年)で、加茂元照氏が辛口の報告をされていましたが、ウィズリー植物園には前述の通り名札も付いた花菖蒲の一画がありますから、若干の進歩はあったのではと思います。

 37年間の商社マン生活を卒業し、故郷の広島に戻って2年、協会にも再入会し、花菖蒲作り再開しましたが、関東とは土質が違い、砂を基調とした我が庭での露地栽培では難しいので、本誌28号の鳥取県の山脇信正氏のプランター栽培の報告を参考にして、昨年の株分け時よりプランター栽培に切り替えたところ、非常に成績が良く、今年の花がたいへん楽しみです。

 現在育てているのは、協会から送付頂いた「紅扇」、「北野天使」、「神曲」、「金鶏」、横浜から持ってきた「七彩の夢」、「邪馬台国」、「初夢」、「清少納言」、「霞の衣」、「磯千鳥」、「スティップルド・リップルス」、それに当地で入手した「児化粧」、「眠り獅子」、「国の光」です。

 どうやら広島は、花菖蒲の後進地のようで、品種のはっきりしている苗を販売している店は少ないので、協会から送付いただく苗を今後の拠り所として、品種を増やして行こうと思っております。また、会報等、先輩諸氏のアドバイスを頼りに、あせらず花菖蒲と付き合ってゆきたいと考えておりますので、今後とも宜しくお願い致します。