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平成17年度「秋の研究会」報告     


 平成17年10月30日午後より秋の例会が開催されました。40名の参加で、冒頭に椎野理事長より協会が新たに取り組もうとしている“フォトライブラリー”についての説明がありました。(詳しくは別項にて解説)
 
 続いては、本会顧問である宮崎大学の藪谷勤先生の「花菖蒲の種間雑種について」という講演です。花菖蒲とキショウブの雑種、花菖蒲とカキツバタとの雑種を始め、胚培養というバイテクの方法を駆使して、自然界ではあり得ない北米産の近縁種との雑種など興味深い写真が紹介されました。また、細胞融合という超ハイテク技術で、我われが予想さえしなかったジャーマンアイリスと花菖蒲との間の雑種を作り出すという快挙も報告されました。

 また、鳥取県より毎年参加されている山脇信正さんからは「磯村さんの花菖蒲栽培」というテーマのビデオが上映されました。元盆栽棚の上に置かれた花菖蒲の立派な数々に息を呑むと同時に、鉢への拘りから始まって用土や肥料の配分、株分けや植え方手順など独自の境地に達している様子がヒシヒシと出席者に伝わって来て、会場は“磯村ここに在り”といった雰囲気に包まれました。(別項記事あり)

 最後は青森県の中野渡裕生さんの「鯉艸郷の花菖蒲よもやま話」です。入園者の減少や北方系の新しい害虫発生など悩める花菖蒲園経営の現状があるようですが、数少ない個人経営の花菖蒲園のオーナーとして、また、経験豊富なわが国の花菖蒲園管理のリーダーとして頑張っておられる様子に、参加者からの惜しみないエールが贈られました。 なお、懇親会参加者は23名で、実はこちらの方が気に入っておられる会員も多そうでした。 (清水 弘 記)
第2回アイリス研究部会報告


 平成17年10月30日、花菖蒲協会の秋の研究会に先立ち朝の9時より11名の参加で開催されました。
 二回目となった今回は、北は青森県から南は宮崎県と全国に散らばっている栽培家や実生改良家が集合しての充実した研究会となりました。
 主催者より「花菖蒲の発展の礎は育種にある。実際の育種試験をやる実生家と基礎的な育種研究をやっている研究者との情報や植物の交換は有意義ではないか」との挨拶から始まり、薮谷先生の 「花菖蒲の色素とその育種的応用」 の譜から始まって、冨増和彦さんのアリルブレッド、重成博さんのルイジアナアイリス、そして加藤正浩さんのジャーマンアイリスの話など、同じアヤメ属の実生・栽培という土俵上での情報交換は熱気を帯び、あっという間に予定の3時間が過ぎました。
 再開を誓っての散会となりましたが、これからも懐の深い花菖蒲協会の姿勢を持って日本のアヤメ文化を創って行きたいものです。なお、本会にて公表された内容については会報に投稿し、後に続いてくる栽培家や実生家のための有用情報の提供をして行く予定です。(清水 弘 記)
          
 
訃 報


 西田勇前会長が平成17年11月28日横浜で逝去されました。享年95才でした。
 同氏は熊本花菖蒲の保存と育種で有名な横浜の西田衆芳園西田家の当主も勤められ、花菖蒲を普及させた功績により昭和58年に横浜市長より横浜文化賞を授与されました。
 日本花菖蒲協会の会長を昭和63年から平成7年まで約7年間務められ会の運営と発展に尽力されました。ここに謹んでご冥福をお祈りします。

 なお次号の会報にて、故人が育成し普及させた品種の写真や西田式花菖蒲の展示や観賞法につき詳しくご紹介する予定です。(椎野 記)
平成17年度花菖蒲展示会 
             
展示会実行委員会


 6月7日(火)から12日(日)まで県立大船フラワーセンターで開催されました。
 その模様については見学に来られた玉川大学の学生さんたちの感想などが別の記事に紹介されていますので、詳細は省略します。
 今回は春先の低温続きのため開花が遅れ、初日はほとんど蕾の状態で、やっと開き始めたものを選抜して展示揃えできましたが、後半になってからなんとか開花し例年どおり美しい花を来場者に見せることができひと安心といったところでした。展示会協力者は次のとおりです。有難うございました。
 
鉢の出展者:
小林昇、橋本卓雄、椎野昌宏、小山章治、稲垣敏明、松本祥子(てまりも含む)、田辺孝、佐々木雅純、石井きよし、三池延和、福住康文(山草展示) 

その他の出展者:
金子キミエ(写真と絵手紙)、飯島康子ほか(生け花)伊東みち子ほか(絵手紙)、広川功子ほか(てまり)、清水不二雄ほか(写真)、河西良祐(俳句色紙)、横尾謙堂(漢詩色紙)

当番 清水弘、金子嘉明夫妻、村井醇、斎藤憲嘉、松下卓夫、中嶋克巳、ほか前記出展者

フォトライブラリー設置要綱について

                   理事長 椎野昌宏


 今般、日本花菖蒲協会にフォトライブラリーを創設することになりましたので、皆様の積極的なご参加、ご協力をお願いします。
                        
〔 目 的 〕
 花菖蒲の品種保存は生の植物体自体を保存すると同時に、これを極力正確な形で行う必要がある。そのためには花菖蒲品種総目録、普及品種リスト、画像を一体化して一目で見られ確認できる形で歴史的に保存することが重要である。
  上記三者の中で品種総目録については加茂花菖蒲園の尽力によって確立され、現在は本会の品種登録係によって管理・維持されているが、普及品種リストと画像(写真)については未だ確立されていない。特に画像については品種特性を示す重要な情報資産である。そこで品種保存の一環として、本会の中にフォトライブラリーを設置することとする。

〔実施要綱〕
1.このライブラリーは会員のボランティア精神により実施されるものであり、個人の利益や利潤を追求するものではない。
2.ライブラリー実現のため、花菖蒲品種が撮影されているデジタル画像やポジスライドを広く会員に呼びかけ無償提供を願う。
3.会員より提供されたデジタル画像やポジスライドの版権は日本花菖蒲協会に帰属す 
  るものとする。
4.提供されたデジタル画像やポジスライドを整理・確認し、普及品種リストと画像CD作成作業のため、本会にプロジェクトチームを結成する。
5.提供枚数が不十分の場合は、その補充のためプロジェクトチームが中心となって新たな撮影を行う。
6.プロジェクトチームのメンバーは会員有志とし順次希望者を募るが、初版完成の目途を2007年秋とする。
7.初版完成後は本会員に対して無料で普及品種リストを配布するが、画像CDは希望者に対して有料で配布する。なお、画像やスライド提供者には画像CD1枚を無償配布する。
8.総目録、普及品リストおよび画像CDを会員外に提供する場合は、会員価格に本ライブラリー維持のための経費を上乗せした形で販売する。また、第三者への無断利用を厳に禁ずる事とする。

[実施担当部門]
 リーダー 清水 弘
 メンバー 橋本卓雄 村井 醇 石井G 金子キミエ
        田淵俊人(ポジフィルム担当)
編集後記

 本年度の会報34号は、編集担当の都合で、執筆された皆様には入稿を三ケ月ばかり早めてもらい、たいへん迷惑をお掛けいたしましたこと、お詫び申し上げますとともに、おかげ様をもちまして無事に発行することが出来ましたこと、お礼申し上げます。
 この度の会報34号では、玉川大学特集ということで、会員の玉川大学農学部の田淵先生の生徒さん方に、今の若者のの目から見た花菖蒲を、率直に語っていただきました。 学生のみなさんは、協会の会員ではありませんが、アンケート結果などを読ませていただきますと、花菖蒲と接するときに大切な和の感性をちゃんと持っており、はっきりと表現されておられる所など、日本人のDNAは、絶えることなく今の若い世代に受け継がれていることを、たいへん頼もしく思いました。
 花菖蒲が日本の文化であるという認識を深めてもらうよう、私は昨年に続いてまた説教じみたことを書きましたが、ご勘弁ください。
 次号の会報では花菖蒲の写真撮影のポイントについて、詳しく触れたいと思います。              (永田)