日本花菖蒲協会で編集し2005年3月に誠文堂新光社より出版された[世界のアイリス]は好評で、2005年9月現在、アマゾン・ドット・コムの売れ筋ベストテンの原種部門で洋蘭類を抑えてトップワンを占めている。協会会員の皆様の販売協力により色々な植物愛好家にも買っていただき、その蔵書に加えてもらっている。また多くの図書館や大学研究室の書架にも置かれているとも聞いている。
花菖蒲はイリス属のなかのひとつである、ノハナショウブ(iris ensata)の園芸種であり、ノハナショウブはジャーマンアイリスの元になったヨーロッパ産の原種たちとも親族であることもお分かりいただけたものと思う。
園芸、英語でhorticulture,は植物の美を追求する人間の主観的な行動でありその結果は文化や風俗として表現される。ノハナショウブは古来日本各地の草原に生えており、人々はその紅紫色の花に親しみ、豊かさをもたらす訪れとして、田植え時期の指標とした。またカキツバタは日本西南地方の湿地帯に紫色の高貴な花を咲かせ万葉、平安時代の宮廷人を魅了し数々の歌に詠まれ今日に残っている。江戸時代に入ってからノハナショウブは花菖蒲として園芸化され、武士や町人の間で盛んに栽培されるようになった。松平菖翁により宇宙など多弁咲きの傑作を生み、絵画や詩歌の題材としても用いられた。
日本のイリス属を代表する花菖蒲、カキツバタ、アヤメは所謂あやめ文化の系譜として位置ずけられ、園芸文化史上重要な存在である。欧米のイリス愛好家達はそれぞれの学名はさておき一般にはジャーパニーズアイリスと総称して扱っている。またすでに米国で独自に一部門を築いた花菖蒲ではなく、カキツバタについての関心が高く、苗の引き合いも多いと聞いている。
協会では目下、花菖蒲関係の写真ライブラリーの創設準備を進めている。品種保存が、病害の発生やら、環境の変化で年々困難となってきており、写真に摂ってPCに保存することが品種記録を残す最善の手段であると認識している。品種写真以外に自生地の姿や、絵画、工芸品の写真なども加えていきたい。二、三年はかかると思うが、CD化し希望者にも有料で販売することも計画している。
あやめ文化の一環と考え、花菖蒲の次はカキツバタもライブラリーの一部門として加えたいと思う。
|