ヒオウギアヤメの育種について 釧路市 佐藤文治 |
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ヒオウギアヤメは日本の北方に多く自生しているアヤメ科の植物ですが、当地釧路地方にも海岸沿いの草原地帯に多く見られ、七月上旬頃青紫の小型の花を咲かせます。 1968年頃からのことですが、ヒオウギアヤメには色々と花色花形などに変異があるのに気づき、興味を持ち自生地から変異個体を採集しては実生を行っておりました。しかし、この程度の変異では実生を行ってもあまり良い花は出現しませんでした。 1971年のことでしたが、白糠町の和天別原野に出掛けたとき、今まで見たことの無いような紅紫色のヒオウギアヤメを発見し、この個体を親にして実生したところ、1976年になって紫に斑の入る個体が出現し白地に緑の散り斑が入り、花は赤味の強い紅紫の美しい花が咲きました。この花は「流氷」と命名しましたが、惜しいことに数年前、無理な株分けにより絶種させてしまいました。 2 育種材料の収集 1971年に紫の大小の花弁が混ざる六英咲きのヒオウギアヤメを、釧路市西にある大楽毛町(おたのしけ)の原野で発見しました。この場所は現在は釧白工業団地となってしまいましたが、この採集した六英花は種子が出来やすい良い個体でした。 1971年には大楽毛の原野で、薄い桃色の三英花のヒオウギアヤメを発見し、この実生から筋花が現れました。 1974年、紫に中央少し淡色のボカシの入る個体を大楽毛の原野にて発見。この自家受粉によって、覆輪花と水白色の個体が出現しました。 1976年、紫の三英、六英、八重の咲く個体を大楽毛の原野にて発見しましたが、この個体はあまり種子が稔りませんでした。 同じ年に外花被が紫で内花被が少し小さいが紅紫色をした六英花を、大楽毛の原野で発見しました。たいへんすばらしい遺伝子を持った個体でしたが、残念ながら遺伝子を残すことなく枯死させてしまいました。 3 育種の方向について 育種改良の方向については、あまりにも花の変異が多すぎて迷っております。しかし、変異咲き種は結実の良くない個体が多いので、思うように育種が進みません。私の好きな花形はビアデッドアイリスの花形ですが、この花形のヒオウギアヤメを作出するのは、最も難しいと思っています。 4 育種の成果 このヒオウギアヤメは園芸化された花菖蒲とは違い、実生しても親に似たような個体の出現する確立は10%以下で、また親よりも優れた個体が出現する確立は一%から0.1%程度と非常に少ないです。 現在、出現しているタイプとしたは、紅紫、水白色、白地に紫筋、薄桃に紫筋、覆輪六英、八重、椀咲き、キキョウ咲き、変化咲き、マークレス、細い絞りの入る花などです。 なお、六英咲き〜八重咲き種は、野生種二個体の交配によるものです。また、ビロード状の花弁を持つものも出現しております。 |
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