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 待望の花菖蒲展示会開かれる

理事長 椎野 昌宏

丹波鉢植一般コーナー
金屏風飾りコーナー
盆養展示コーナー
切り花展示コーナー(大船系品種)
その他展示コーナー
花菖蒲講演会・清水弘講師

  平成十三年六月十二日(火)から十七日(日)まで六日間、神奈川県鎌倉市にある県立大船フラワーセンターで同園の協力を得て、日本花菖蒲協会主催の花菖蒲展示会が盛大に開催されました。同園は会報の第二十九号で紹介しましたが、戦前の農事試験場時代に、宮沢文吾先生が花菖蒲の品種改良に努められ、沢山の品種を作出され、大船種として現在まで保存栽培している花菖蒲に大変所縁のある所です。

   本年は日本花菖蒲協会創立70周年を迎え、記念行事の一環として是非協会主催の展示会を開きたいという声が鬱勃として起こり、場所を選定してきました。タイミングよく大船フラワーセンターと話が決まり、長い間中断していた展示会を開く運びとなりました。記録によると協会ができた昭和5年6月には、第一回展示会が日比谷公園の陳列会場と花壇入口で約700株が出品されて行なわれ、特に熊本県花菖蒲協会の見事な鉢作りが初めてお目見えし、来園市民を魅了し驚愕させたようです。

   今の時代には全国各地に花菖蒲園が出来て、開花期には観光目当てで、沢山の人々が集まり花菖蒲を見ることができます。一方、協会はリーダー的存在として、協会主催の展示会を定期的に開き、育て方、展示の仕方、鑑賞のポイント、新品種の紹介などを一般の人々に知らせる存在であるべきものと認識していました。ここにその意図を再現する機会を得て、準備委員一同奮い立ちました。準備委員は石川もり子、小林昇、金子キミエ、椎野昌宏、清水弘、曽根田三男、橋本卓雄、福住康文、松本祥子、三池延和、の諸氏で事前に二回の打ち合わせ会を開きました。

   展示場は園内の池のほとりにある第二展示場で、約152平方米の面積の屋根付きの建物で採光や風通も良く、花菖蒲にとっても好適な環境です。小林氏が以前練馬区の自宅付近で、大テントの展示場を設営して花菖蒲を展示し、多くの人々を集めて好評を博したことが想起されますが、同氏の貴重なノウハウに基づき、今回の展示プランを作成しました。掲載写真により来園されなかった方には想像していただきますが、簡単に説明してみます。

* 金屏風飾りコーナー
  金屏風は小林氏の自製のものを使用し、当日の丹波鉢植えの最優秀品を七株選んで展示。

* 丹波鉢植一般コーナー
  当日の佳品を選抜し、二列に約四十鉢を展示。

* 盆養展示コーナー
 盆養作りの鉢を十鉢展示。

* 切り花展示コーナー
  加茂花菖蒲園及び大船フラワーセンターより提供されたたくさんの切り花を花瓶に入れて展示。

* その他展示コーナー
  寄せ植え、二本植え、丹波鉢以外の鉢植えを展示。

* 販売コーナー
  花付きポットを一鉢八百円で、カッティング苗を一株五百円で販売。その他、協会の会報や、花菖蒲書籍を販売。

   これらの展示コーナーを飾るためにどのくらいの鉢数が用意されたか、花菖蒲の花が咲いているのは三日間ですから少なくとも三日間に一回は鉢を変えなければなりません。この作業を毎朝開園前にやらねばならず、展示数の三倍から四倍の鉢数を準備しておく必要があります。今回はそのため、総数で展示候補鉢を三百五十鉢程度揃えました。また展示作業、来園者に対する応対、販売実務などを行なう当番として、一日当たり最低五人は必要で、搬入搬出日を加えて、八日間で延べ四十七人の動員となりました。

   それでは展示結果はどうであったか、当事者の私達ではなく、第三者に評価してもらうべきでしょうが、一応成功であったと自認しています。今年は春の到来が早く、暖かい日が続き、花菖蒲の開花が早まるのではないかと懸念していましたが、幸い六月に入ってから曇天が続き涼しい気候となり、六月十二日からの展示開始にちょうどタイミングが合いました。一番花を主体に美しい花を見せることができました。

   金屏風コーナーには、宇宙、雪女王、白鳳、紫衣の誉、千上天、淡路島、雪祭、千鳥、星空、槍ヶ岳、旭匠、耶馬台国、熱砂の舞などの優秀作品が展示されました。

   また一般コーナーにも多くの佳品が飾られましたが、そのうちピンク・ミステリー、グレート・モガール、赤兎、群青などが目を引きました。大船系では、朽葉、昇花殿、古代紫が輝いていました。

   さらに、最も参観者の注目を浴びた盆養コーナーには小林昇、曽根田三男両氏の出展によるローズクイーン、江戸系不知火、長井小紫、皇玉、千歳、夕陽、水巴、武者扇などに、感嘆の声があがっていました。

    切り花コーナーには、加茂花菖蒲園から二回に分けて三00本、大船フラワーセンターから二回に分けて八十本の出展があり、絢爛たる彩りを添えました。
   出展されたのは、小林、曾根田氏以外に相沢トキ江、椎野昌宏、清水弘、中島克巳、橋本卓雄、福住康文、松本祥子の諸氏であり、また会期中の当番として参加していただいたのは出展者に加え、金子キミエ、小林章治、斉藤憲嘉、鈴木栄一、三池延和の諸氏です。
   花菖蒲の展示の引き立て役として、松本さんの花菖蒲を擬した手毬の手芸作品、金子さんの額に入れた花菖蒲の写真の掲示などもありました。

 
会期中の六月十六日(土)には、園内のホールで、一般向けに花菖蒲の講演会があり、当会より清水さんが講師として出演し好評でした。

    大船フラワーセンター展示普及課長の佐藤さんの話では、会期中に前年同期間比約五十パーセント増の六三00人の入場者があり、そのうち経験値として半数が展示場を訪れたとして、おおよそ三一五0人の人々が鑑賞してくれたものと推測しています。
   来年度も継続開催する予定ですが、会員の皆様にお願いすべき点を列記してみます。
・ 東京、神奈川、千葉、埼玉の会員にはできる限り多くの方に出展者として参加してもらいたい。搬入搬出の運搬経費予算の関係上、あまり遠隔地まで行けないかもしれませんが、すくなくとも首都圏の方には作品を出して欲しい。
・ 同様に、会期中当番としても参加して欲しい。一日に最低五人は必要です。今回は特定の方が前後八日間も詰めたこともあり、大変な負担をかけてしまいました。是非とも来年は一人でも多くの方に手伝っていただきたい。
  終わりに、展示会のために陰で色々と協力していただいた大船フラワーセンターの田辺孝植栽主任に心より感謝します。


展示鉢用の木製ラベルに品種名を書き込む椎野理事長

小林 昇氏が出品した盆養作り

手芸作品を出品してくだすった方々
展示スタッフ

展示スタッフ