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芹口氏宅の花菖蒲展示,屏風,鉢受け皿とも芹口氏の手製 |
私は熊本県阿蘇郡の農村に生まれました。そんな私が昭和40年ふとした縁から神奈川県の大船植物園に就職するという幸運に恵まれたのです。植物園で面接を受けた日の事、当時課長だった上野さんという方が、熊本には肥後六花という有名な伝統園芸があるね、と言はれたのですが、私には何のことやらさっぱり分かりません。信じてもらへないかも知れませんが、熊本に育ったといっても井の中の蛙で、肥後六花が何であるのか耳にしたことも無かったのです。恥を忍んでその話をしますと、えッ、肥後六花を知らない?…それはね、椿、山茶花、芍薬、菊、朝顔、花菖蒲、これらの花名の頭に肥後を冠して、肥後何々、と呼んで独特の育て方をする花のことだよ、と教えてくれました。それ以来私は六花の中の何か一つを手掛けて絶対に成功してみせるぞと、ひそかに決意したのでした。運というものは思はぬ所にあるものです。
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