全国花菖蒲園めぐり そのニ
愛知県岡崎市 東公園花菖蒲園
岡崎ハナショウブ愛菖会 板倉定夫
家康のふるさと岡崎
五万石でも岡崎さまは
お城下まで舟がつく
と、全国に知られている岡崎市は、愛知県のほぼ中央にあり、豊かな緑と美しい矢作川、乙川の清流にはぐくまれ、家康の祖父松平清康による開市以来、四百五十有余年の歴史と伝統を受け継ぎ、西三河の中核都市として躍進を続け、自然と人工がたくみに調和した環境のよい城下町です。
この岡崎の名を全国に知らしめているのは、江戸幕府を開いた郷土の英傑徳川家康で、天文十年(一五四ニ)十二月二十六日、岡崎城内で生まれました。また、鎌倉街道や東海道など東西交通の要所として栄え、いろいろな伝説や、歴史的、文化的な遺産が数多く残されております。
さて、このたび日本花菖蒲協会の皆様が、平成九年度旅行会兼総会を岡崎市で開催された六月五日は、東公園内の花菖蒲は満開で、遠くは北海道や関西方面など、全国からの観光客で賑わいを見せている時でした。
東公園
東公園は、年昭和三年(一九ニ八)名誉市民の世界地理学者、志賀重ミ先生が建てた釈迦堂(現、世尊寺)を前身として開設された。今は住宅の増えた南一帯の浜積台地の「根石ヶ原」に灌漑していた溜め池を生かした公園で、志賀重ミゆかりの南北亭を始め、展望台、浮御堂、観月橋、遊園地、希望の森、郷土の偉人本多光太郎博士の勉強部屋、野外ステージ、小動物園、花菖蒲園、茶室等樹庵などがある。春は新緑、初夏の花菖蒲、秋はもみじ狩り、冬はジョギングと、親子で楽しめる岡崎市の代表的な憩いの場所です。
昭和三十九年(一八六四)に開園した花菖蒲園は、当初故冨野耕治先生のご指導により、伊勢系の品種を中心に作付がなされていたが、その後、住民の要望もあって、開園期間を開花に合わせるため、江戸系、肥後系等を加え、花菖蒲もバラエティに富んだものになりました。
昭和五十八年(一九八三)には、愛知県花のカキツバタが近隣の刈谷市より寄贈され、東公園花菖蒲園は見事に充実しました。
初夏の菖蒲まつり
毎年六月一日から、二十日まで「東公園菖蒲まつり」が行われます。このまつりを運営しておられる根石学区菖蒲まつり実行委員会」の委員長、宇野五郎氏にお話を伺いました。
菖蒲まつりの魅力は?
宇野 水辺に咲き誇る花菖蒲の美しさです。故冨野耕治博士は東公園の花菖蒲園を「花菖蒲の名所」の一つに挙げておられました。伊勢系、江戸系を中心に種類も豊富で、株数も一万株以上になり、花の違いを比べるのも面白いと思います。
このまつりの特徴は?
宇野 根石学区民全員で考え、盛り上げる。手作りの祭りと言ったところでしょうか。ぼんぼり飾りやちょうちんの設置、管理だけでなく「ふれあい芸能まつり」や「抹茶会」「煎茶会」といったイベントの企画から運営まで、地元が中心となって行っています。また、安心して楽しんでもらえるように、夜間パトロールにも精を出しています。
九七年度の菖蒲まつりのスケジュールは?
宇野 昨年の菖蒲まつりのスケジュールは次の表に示した通りです。
これからどのようなまつりに?
宇野 これまで花菖蒲に関する講演会を、実行委員会と地元の花菖蒲愛好団体、岡崎ハナショウブ愛菖会との共催で、平尾先生、冨野先生、三池先生、また地元女子大学教授の中垣先生らの講師をお招きして開催したこともありました。このように、今後も地元の皆様との交流によってアイディアを出し合い、市民に親しまれるまつりを作って行きたいものです。学区の皆様や、岡崎ハナショウブ愛菖会、東公園の職員の方々と一緒になって、花菖蒲の手入れ、整備を続けていこうと思います。東公園の花菖蒲、そして、菖蒲まつりを岡崎のシンボルに。これが私たち実行委員会の夢であり目標です。
花菖蒲展示会
花菖蒲の展示会は、菖蒲まつり実行委員会に協賛して、岡崎ハナショウブ愛菖会が主催して行っている。東公園内の菖蒲沿道一帯に、期間中(二十日間)プランターに植えたものを配列展示し、その他市役所、福祉施設、金融機関、交番など公共的機関の玄関に分散配置して、期間中花を添えている。
また、花菖蒲展示会本会場は、東公園内多目的広場に天幕内展示施設を設けて、一週間の展示を行っています。そして、展示期間中愛菖会のメンバーが当番で案内につとめ、花と住民の交流ふれあいの場所としています。
平成九年度は、展示会開催期間を、日本花菖蒲協会の旅行会の日程にあわせて行いました。
日本花菖蒲協会のご配慮に預かり、特別協賛出品をいただき、異彩を添えられたことは、住民の喜びとするところでありました。中でも会員の小林昇氏が出品してくださった花菖蒲の浅鉢盆養作りは、参観者にとても人気の高いものでありました。
菖蒲愛好者の夢を託して
私共の地域には、素晴らしい花菖蒲がある。花菖蒲園がある。そしてあたたかい皆様に包まれている。このたびの全国花菖蒲界の方々との交流によって、ますますその実績が身にしみじみと応え、お互いの楽しみと活力が湧いてきました。これからの交流によって、生活の質や価値感を考え、独自の文化を大切にしたいと感じています。地域をこれまでに育て上げられた諸先輩の名に恥ずかしめることのないように、これからも努めてまいりたいと思います。
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