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 第一回 アイリス研究部会 報告

                  研究部
 会場となった加茂花菖蒲園。5月末であったが暑い日で、花菖蒲もまだ序盤とはいえかなりの品種が咲いてきていた。
 清水氏が持参したアイシャドウアイリスの新花。くっきりとした目型模様に加茂氏があやめの語源に通じると感心し、性質も丈夫で開花期も長いこの系統が、将来、花菖蒲園で大いに利用されるだろうとと話した。
 会合は、加茂花菖蒲園の事務室の二階で行われた。屋根裏部屋の物置だが、この協会会報を制作しているスペースであり、花菖蒲に関する資料も豊富である。中心で加茂氏が清水氏のアイシャドウアイリスを批評している。
左から清水氏、椎野理事長、冨増氏、田淵氏。短い時間ではあったが、活発な意見交換が行われた。

 昨年の会報にて、理事長から提案がだされたアイリス研究部会の第一回目の会合が、昨年の五月末に静岡県の加茂花菖蒲園にて行われました。末

日時 平成16年5月29日
       13:00〜16:00
場所 静岡県掛川市 加茂花菖蒲園
参加者 愛知県:香村敏郎、加藤勲
神奈川県:椎野昌広、田淵俊人、清水弘
滋賀県:冨増和彦
静岡県:加茂元照、一江豊一、永田敏弘

内 容

 会合は、花菖蒲育種に関するフリーディスカッションの形式を取り、花菖蒲の開花時期であることなどから、花菖蒲に関する話題が中心となり、以下のような発言がありました。
         
1.あやめ文化と育種
 「あやめ」の名は、弁元の金色に美しい輝くV字形(目形)の模様から「美しい目」「綾目」を意味して付けられたものであるから、この目を生かした育種を考えるべきであろう。
 現在の品種は人々が自然からの変り花を収集・庭植えした結果、庭園での自然交雑を生かした形で成立してきたが、油断していると病気などで絶やしかねない。
 現在、リゾクトニア属の細菌感染が広がり、2,3割の品種が絶えかかっているが、生き残った品種を使った抵抗性品種を作って行くのが重要課題であり、そのことが同時にあやめ文化を守って行くことに通じてゆく。
 都会の狭い庭では従来の大型花菖蒲は受入られない。花期の長い小型品種を作って行く必要がある。
 あやめ文化を引き継ぐ次世代の若者の志向をみる必要があるし、彼らに花菖蒲を介したあやめ文化を理解させてゆくための試みに挑戦してゆくべきであろう。

2.花菖蒲の基礎研究
  植物生理の研究を進めてゆくことによって、花の寿命の長い品種の作出に繋がって行く。
  連作障害についても、是非、基礎研究を積んで行かなければならない。花菖蒲から一種の毒性物質を出して自家中毒してゆく可能性もあるが、他の植物がこのような現象を抑えることもあるので、混植栽培・嫌地対策に適した植物を探すことも必要であろう。

3.原種の保護
  多くの品種の元となった原種についても敬意を払うとともに積極的な保護も必要となってゆく。
  しかし、原種が万能かというと栽培下で獲得していった形質もあるので、原種、栽培品種の両面からの保護も必要である。