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 花菖蒲あれこれ

        岡山県総社市 片岡 文男

NHK趣味の園芸 人気品種と育て方
ハナショウブ(花菖蒲)
 日本花菖蒲協会編集
定価1700円+税
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    協会創立70周年おめでとうございます。私は、まだ入会して六年と年月は浅いのですが、26年前より園芸雑誌で見た花菖蒲に心ひかれ、少しずつ品種収集を続けてきました。そして、個人での収集に限界を感じたときに、本協会のことを知り入会致しました。入会後は毎年一回協会会報と品種名付きの配付苗が送られ、観賞旅行や新年会の案内も送られて来ます。会報は配付苗と同時に春四月上旬頃送られて来ますが、会報が届く頃は今日か明日かと待ちどおしい思いで、毎日郵便受けに向かいます。そして待望の会報が届くと、その日の仕事は休みにして会報を読みます。最新花の写真や、愛好家や品種改良家の苦労話などが満載された会報は、地方に住む私にとって唯一の情報源となっています。

    私は、花菖蒲の品種を蒐集していますが、これにしても協会に入会して知りあった多くの方々の好意的な協力があったればのことです。2001年の10月現在、1,650品種を越えるまでになりました。

   さて、花菖蒲を販売している関係で、全国から色々な問い合わせが届きますガ、思いついたことを書きならべてみることにします。

    まず一番多いのは、探している品種の有無で、少量多品種栽培のため手紙および葉書にて在庫確認の上ご注文いただいており、また不在がちなため、電話でのお問い合わせはお断りしております。

    二番目に多いのは、花容の問い合わせで、園芸誌や通販カタログで見て美しかったので購入したが、咲いたら花色が薄かったというものです。これは開花時に、気温が高く昼夜の温度差が少ない場合、花色が鮮明に出にくいというきらいがあります。また最近の印刷物は、実際の色彩より派手めに印刷されてあることが多いので、全体的に印刷が派手めなカタログなどの場合は、そのままの色彩の花が咲くわけではないと考えた方が懸命です。近くに花菖蒲園があれば、開花している株を確認するか、信頼のおける園で購入されることをお薦め致します。

   三英が六英に咲いた、八重が六英に咲いたなど、花弁数が変化したという話もよく聞きますが、当園でも時々こういう花が咲くことがありますが、多くは遠方より購入して半年以内に開花した株です。これは株に力が無いためで、次年よりは正常に開花することが多いです。しかし、三年以上正しい咲き方にならないときは、買い替えをお薦めします。

   三番目は、大輪種を買ったのに中輪しか咲かないという問い合わせです。これも株に力が無いからで、肥料が十分でのびのび育てば、中輪の品種でも大輪並に咲くものです。株分けの遅れや肥料不足、今までアヤメ科の植物が植え付けてあった場所に植えたためによる連作障害。開花時の水不足など、さまざまな原因が考えられます。株分けは鉢なら毎年、地植えでは二〜三年間隔で行い、肥料は夏から秋に有機物系の肥料をしっかり与え、葉色が濃緑色になり株張が旺盛になれば、次の年は立派に咲きます。

    四番目は、株分けをしても葉が伸びず草丈が低いというもので、これもいろいろな原因が考えられます。株分け後に順調に成育しなかった場合、翌年の成育に影響が出ます。また、春から開花期頃まで水分が少なかった場合も草丈は低くなりますので、芽出しから開花までは浅い受け皿を利用して、腰水管理すると素直に伸びます。また、もともと草丈の低い品種もあります。

   五番目は、雑草が生えて困るという質問で、当方は雑草も生えない土では良い作物はできないと考えており、薬剤処理ではなく、二カ月に一度、園芸用のピンセットで根まで抜くようにしています。

   六番目は、何種類か購入して植え付けたが、数年後、植えたことのない花が咲いたということで、これは開花後に花茎を切り取らなかったため、種が自然結実し、それが生えて花を咲かせた場合が考えられます。実を付けると株が確実に弱るので、交配を目的としない場合は、開花後に花茎を株元から切り捨てます。

    協会の会員の方以外からも花菖蒲の質問が寄せられますが、栽培状況を聞いてみると、信じられないような作り方をしており、こちらが驚くことがあります。

    例えば、何度も購入するが枯れてしまい、翌年まで保たない。この方は、花菖蒲が冬場に休眠することを知らなかった為に、冬になると枯れてしまったと思い、株を捨てていたそうです。

   またある方は、六月中旬に開花している鉢植えを買ったが、伸びて来た葉が細く折れたりして枯れてしまうと話しておりましたが、聞いてみると、買ってから観葉植物と同様に、室内のタンスの上に置いていたと言うのです。花菖蒲は室外の日当たりの良いところで栽培するものと教えましたが、今まで暗いところに置いていたものを、いきなり明るいところに出すと株が弱って枯れやすいので、室外で午前中のみ陽の当たる木陰などに一カ月置いて、株を陽に馴らさせてから、日当たりの良い場所で栽培するよう勧めました。

   またある方は、約二十品種くらい栽培しているが、今年は花がまったく咲かなかったと言われます。聞いてみると、前年の開花後の植え替えのときに、普通は根元から二十センチ程度のところで葉を切って植え付けるところを、株元から約三センチ残して切って植え付けたそうです。あまりに葉を短く切り過ぎて植え替えたため、その後十分に成育しなかったからなのです。

   以上、いろいろと書きだしてみましたが、花菖蒲を長年栽培している方々には当たり前の管理と思うことでも、初心者の方の中には、栽培技術の情報不足で同じような失敗を繰り返し、花菖蒲は栽培が困難と思われている方もおられます。当方では栽培の手引書として、一九九九年六月発行の「NHK趣味の園芸  人気品種と育て方  ハナショウブ(花菖蒲)」を書店で購入するか、近年普及してきたインターネットでも、日本花菖蒲協会のホームページや、他のホームページでも栽培についての情報が得られると教えています。

 
公園や花菖蒲園で観賞するだけでなく、品種数は少なくても、自宅で固い蕾の先から花色が覗きはじめ、今日か明日かと開花が待ちどうしい思い。花弁が伸びながら大きく開花した時の喜びなどを感じてもらい、一人でも多くの人が花菖蒲を長く栽培していただければと思っております。


   本年度より通信販売をはじめました。リストご希望の方は、葉書か封書で左記住所までお申し込みください。お探しの品種や疑問・質問なども、葉書か封書でお願い致します。

〒719-1114

岡山県総社市金井戸二八五

片岡花菖蒲園  片岡 文男