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 私の花菖蒲園めぐり

   岡山県  片岡 文男


山梨県南巨摩郡南部町十枚温泉に移転した経塚園

 私は毎年、我が家の開花最盛期前後に、岡山県内や近県の花菖蒲園を見学し、今年も数ヶ所の園に出かけました。

 5月下旬、広島県沼隈郡の平家谷花菖蒲園に行きました。この園は、1万2千へーベーに約5百種、5万株の花菖蒲を栽培していて、平日で花見客はまばらでしたが、花は五分咲きで配色も美しく植え込まれ、遊歩道も整備されていて、ゆったりとした気分で花を満喫させていただきました。

 6月の中旬、岡山県の北部に開園している2軒の花菖蒲園に出かけました。最初に、2年前にオープンした「あさひ花菖蒲園」に行きましたが、この園は1.5ヘクタールに5万株が植え込まれていて、初めて見る品種も数品種ありましたが、早くも連作障害が現れていて、草丈も低く蕾も花もほとんどなく、残念に思いました。

 次は、津山市郊外で約5千平方メートルに約五百種を植え込んでいる「津山花菖蒲園」に、この園は休耕田を利用して地域のグループで管理運営している園で、園内の通路や株間に雑草なども無く、株もバランス良く茂り蕾も多数ありましたが、行く日が早すぎて開花株が少なかったことと、品種名の書いた名札が一枚も無かったのが残念でした。

 5月下旬頃、6月の下旬頃に静岡の加茂花菖蒲園と同県の藤枝市にある経塚園、また相模原の清水氏と、東京の花菖蒲園に行きたいと花友に相談したところ、地理の不案内な私を心配して、案内すると言っていただき感謝しました。経塚園は藤枝にあるとばかり思っておりましたが、花友からの連絡で、山梨の方へ引っ越されたとのことでした。
そして6月の下旬、の総社駅から一番列車で掛川に着き、花友と合流し、加茂花菖蒲園を見学した後、経塚園に花友の車で出かけました。道中では近況などを話ながら、およそ3時間で山梨県南巨摩郡南部町十枚温泉にある経塚園の移転先に、午後二時ごろ到着しました。園主の津島氏とは初対面でしたが、藤枝からの移転の経緯や、栽培の苦労話を聞きながら園内を見学させていただきました。山の中腹の平地にある園は広さは見たところ20アールほどで、津島氏が作出された品種が多く咲いていましたが、開花は終盤といった感じでした。

明治神宮御苑花菖蒲園

 翌日は相模原の清水氏宅に伺いました。午前十時頃相原の駅に到着すると、清水氏が迎えに来てくれました。私はそれまで遠方のため、清水氏とは葉書で何度かご連絡をさせていただいた程度で初対面でしたが、親しく話し掛けていただき、家のまわりに様々な植物が植えられている氏のお庭を拝見させていただいた後、氏のお宅の座敷に上がり、花菖蒲という共通の話題で、清水氏の奥様を交え、四人で楽しく品種改良の話題や栽培の苦労話に花が咲きました。暑い日でしたが、これから後明治神宮に行くことを告げると、ご夫婦で新宿まで直通で行ける橋本駅まで送っていただき、きわめて細やかな親切に感謝いたしました。

 それから、午後二時頃に明治神宮に着きました。私は今までに二度しか東京に行ったことがなく、東京は人が多い、車が多い、ビルばかりというイメージでしたが、原宿の異常な雑踏から、明治神宮の境内に一歩足を踏み入れると、ここが東京都内とは思えないほど静かで、聞こえてくるのは木々のざわめきと、時々すれ違う人々の小さな話し声だけでした。参道から花菖蒲苑へ向かう道に入り、入り口で入園料を払い、この御苑の花菖蒲図譜を買いました。それまで7千円していたこの図譜が、売れないためか処分価格の二千円で販売されており、花友は古書店では1万4千円が相場で、江戸の古花百種が正確に描写されており、最も信頼のおけるものだと話していました。

 園内の小道をしばらく歩くと、木々の間から雑誌などでよく見慣れた花菖蒲苑が現れました。出来があまり良くないことで有名だと花友は話していましたが、今年は草丈も延び、花は七分咲きで、今がちょうど見頃でした。ここは、神宮の森に囲まれ、日照があまり良くないため、他の園よりも開花は遅めなのだそうです。この苑だけにしかない「虎 嘯」や「七 宝」、「御幸簾」なども見られ、満足した気分で帰路に着きました。