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休耕田に花菖蒲を咲かせています。
               
広島県高田郡向原町「姫の里」花菖蒲園  山本 みゆき


 平成に入ってからわが向原町は、町の花、町の木を町民から募集し、その結果町の花には「花菖蒲」、町の木には「松」が定められ、町のシンボルとしてイメージ作りに取り組むこととなりました。


 花菖蒲は、当時の町長さんの家にもあり、大きな旧家の白壁の外塀を背景に盛んに咲き誇っておりましたので、町民の多くも納得して、花時には町以外からの観賞者もあり、「菖蒲まつり」として定着し、町のイメージアップになったかに思えました。
 しかしなが花菖蒲を毎年きれいに咲かせるためには、多くの条件を克服しなければならず、なかなか思うようにいきませんでした。そのため町内に普及するどころか愛好者も次第に減り、次第に衰退してしまい、町の観光協会が町からの補助金でなんとか咲かせてはいましたが、とても町花として町のシンボルにはなれないような状態になってきました。

 そのような状況にあった平成の6年、親しい仲間に「花菖蒲を咲かせてみない?」と呼び掛けたところ、八人の協力者があり、その後仲間も増えて現在は十名でがんばっております。 幸いにも、県道脇の七アールの休耕田を借りることができ、愛好者の一人から花株を譲り受け、二千株を植えつけてスタートしました。この年は例年にない晴天続きで苗を枯らしたりしましたので、植え継ぎなどで全体のバランスを取ったために、全く乱植になり名札も付けていませんが、昨年の六月も大輪の花が溢れるように咲きました。(写真)

 花の性格や栽培技術など全く知らずにスタートした私達でしたが、株を譲っていただいた方からの適切なアドバイスで、今日まで植え替えの手間も掛けずに大輪の花を咲かせ続けています。毎年六月の花時には、町の観光協会主催の「菖蒲まつり」に協賛して、茶菓子を接待し、自由に花を観賞してもらい、希望の方には花株も販売しています。花の最盛期に希望の花を株分けして販売しておりますので、お客さんにもたいへん喜んで頂いております。この株分けがかえって毎年良い花を咲かせ続ける条件の一つになっているように思え、株の大きさに合わせ三分の一から二分の一を残して販売しております。

 昨年の春には、背景として花菖蒲を一層引き立てている茅葺き小屋(灰屋)の屋根の葺替えを、地主さんのご好意でしていただき、一段と花が美しく映え嬉しいことでした。カメラを持っての観賞者もたくさん見え、高校の写真クラブの方々も毎年来園されています。 また、昨年の六月八日には、県内で「花田植え」の写真を撮りに来られていた群馬県のプロカメラマンの久保塚導さんがテレビで知ったと言って来園され、夕方から翌朝にかけて撮影されましたが、「全国各地の花菖蒲園を見て歩くがここの花が一番いい、広さではないんですよ花の良さですよ。」と褒めていただき、たいへん励みになりました。後日その時の写真を送っていただきました。


 毎年の気候条件によって、花の生育状況が異なり、とくに花の見頃を見定め「しょうぶ祭り」の日程を決めるのも一苦労ですが、小一ヶ月の花の期間のために、一年間の管理は何かと大変ですが、立派な花が咲き揃うのを見ると、「やったり」と内心誇らしく思います。 何と言っても、性質上栽培するのが何かと難しい花菖蒲のことについては、適切な指導を受ける機関も少なく、協会の資料は何よりも参考になります。今後とも良い資料の提供をお願い致します。