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長井のあやめ

長井市商工観光課


 明治四十二年頃、国鉄長井線の敷設運動資金の捻出のために、町有の杉林を伐採して運動費にあて、その跡地に当時河原守をしていた風流人、近藤安兵衛氏、工藤太兵衛氏、金田勝見氏の三人が野生のあやめを集めて育て始め、茶店を開いたのが現在の「あやめ公園」の端緒であります。そして、大正三年五月に正式に「あやめ公園」として開園し、数回の拡張工事を行い、昭和五年には山形新聞社主催の「山形県名所県一」の人気投票第一に選ばれております。

 第二次大戦中は芋畑となり、美しい花は見る影もなくなりましたが、終戦後の昭和二十三年に、失業対策事業であやめ公園の復興をはかり、あやめ苗を明治神宮より譲り受けたり、近郷のあやめ所有者から寄付を受けたりしながら再建をはかりました。


 現在のあやめ公園は、三・三ヘクタールの面積に「長井小町」などの長井古種をはじめとして、五百種・百万本のあやめが植栽されており、六月下旬から七月上旬が一番のあやめの見頃となりますので、この時期、六月十日から七月十日までの一ヶ月の間「ながいあやめまつり」を開催し、市内外から四十万人のお客様が来園されます。
 この公園の管理運営につきましては、市が直営で行っており、公園管理作業員の雇用により、長井市観光協会、長井あやめ愛好会、長井農業改良普及センターのご指導を受けながら実施しております。当市では、平成八年度から「レインボープラン」というものを実施しておりますが、これは有機物資源の地域内循環を目指した取り組みで、家庭の生ゴミから優良な堆肥を作り、化学肥料に頼らない自然生態系に即した土作りを行っており、あやめ公園のあやめの育成にも役立てております。
 また、平成四年度から公園改造事業に取り組み、あやめの開花期間だけでなく、年間を通して市民の憩いの場となる公園づくりも手がけております。


 花のまち長井に咲く花々は、あやめだけではありません。樹齢千二百年の国指定天然記念物「久保桜」のほか、草岡の桜、最上川堤防沿いの千本桜、白兎のシダレザクラ、外田公園の桜など春は薄紅色に染まります。そして五月、松ヶ池公園の白つつじが雪が降り積もったかのように一面に咲き誇ります。中でも樹齢七百五十年といわれる琉球種の古木は二メートルにも及び実に壮観です。旧盆が過ぎた頃、あやめ公園と置賜野川を隔てた「はぎ公園」では、白萩、紅萩等が可憐な花をつけます。 さらには、文化施設として縄文時代にタイムスリップできる「古代丘」や、長井市出身の彫刻家・長沼 孝三氏の作品を展示した「長沼孝三彫塑館」、そして蔵の美術館「やませ蔵」があり、最上川の舟運で栄えた商業都市としての長井の洗練された文化に出会うことができます。